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株式会社カラダノート

「多様性に応える環境」×「個人に依存しない仕組み」で社員を尊重——株式会社カラダノート

子育て世代の働き方とキャリアのあり方を変えていくには、その周辺環境のアップデートが必須です。そして企業には、活躍してくれる社員が、ライフステージに関わらず働き続けられる環境の実現が求められています。

しかし、その環境の実現には手探りの企業も多いのが現状です。個人にもチームにも高いパフォーマンスが求められるスタートアップには、より一層の努力が求められます。

今回は、株式会社カラダノート(以下、カラダノート)で取締役CFO(最高財務責任者)を務める平岡 晃さんにお話を伺いました。平岡さんは役員を務めていますが、育休を取得したことで、社内制度設計への意識にも変化が生まれたと語ります。それはいったいどのような変化で、また社内にどういった影響をおよぼしたのでしょうか。

株式会社カラダノート 取締役CFO(最高財務責任者) 平岡 晃さん
大企業からベンチャー企業まで、全3社で経営企画や社内体制構築などを担当。2017年2月よりカラダノートに入社し、同社のIPO準備をサポートした。現在は同社の人事・広報・経理財務を統括するコーポレート本部全体のマネジメントを行うなど幅広い業務を担う。2児の父。

あらゆる家族に寄り添って伴走できるプロダクトを展開

———まず、カラダノートがどのような事業をしている企業なのか教えてください。

平岡:カラダノートでは、「家族の健康を支え、笑顔をふやす」というビジョンのもと、ライフイベントを起点に家族を支える各種サービスを提供しています。妊婦向けなど各種保険や飲料水の宅配サービスといった生活インフラサービスから、妊娠中の方に向けたアプリ・メディア運営、服薬や通院の記録ができるアプリの提供などをしています。

また、家の住み替え希望者と住宅会社のマッチングをサポートしたり、ライフイベントを起点にした企業様のDX推進事業も行なっています。

———社員の方は何名ぐらいいらっしゃいますか?やはり、女性が多くいらっしゃるのでしょうか。

平岡:全体で60名弱ぐらいで、女性は半数より少し多いくらいです。社員の平均年齢は32歳ぐらいですね。

ただ全員が子育て中というわけではないです。約半分が子育て中、全体の4分の1ほどが既婚で子どもなし、残りの4分の1が未婚の方、ぐらいの割合で、様々なライフステージの社員がいます。子育て中で、時短勤務の社員もいるので、個人の希望に寄り添った働き方を選択いただけます。。

 

あえての「フェアな制度設計」で、誰もが活躍できる環境を実現

———企業柄、子育てや身体に関する関心が高くて、育休を取られたり復帰されたりする方も多いのでしょうか。

平岡:会社規模がそれほど大きくないので、事例自体は多くはないですが、産休・育休を取得した社員は、100%復職しています。

私もカラダノートに入社後、2人目の子どもが産まれ、その際は3週間ぐらい育休を取らせていただきました。

———他の企業の方とお会いすることもありますが、企業の役員の方が育休を取られた話はなかなか聞きません。2022年4月から男性育休も取得していく決まりが制定されましたが、平岡さんのケースは社内でも先進的だったのではと思います。

平岡そうですね、少ないかもしれませんね。今もそんなに表に出てニュースになるような感じではないですし。

とはいえ私が育休を取得した頃は、ベンチャー企業の社長を務めつつ育休を取得する方が出始めた頃ではあったので、それほどハードルの高さは感じませんでした。

———3週間の育休を取得したのは会社から勧められたからか、平岡さんご自身で奥さんの状況を見て「取ろう」と思ったからなのか、どちらでしょうか。

平岡:自分から取得しましたね。

というのも会社としてはもともと、「子どもが産まれたら育休を取るのが当然」という雰囲気がありましたので。育休の期間については、妻と話し合って決めました。

———男性女性に関わらず、育休を取るのが気まずくない環境なんですね。

平岡:そうです。私の前にも男性で育休を取得された方も何人か居ましたし、初めて私が取ったわけではないですよ。

———社内では、子育て世代をバックアップする仕組みは備わっていたのでしょうか。

平岡:いえ、子育て世代に特化した制度がある訳ではないです。

特定の社員だけに何かをする仕組みというよりは、家族アニバーサリー休暇、在宅制度やフレックスタイム制の導入など、ライフステージの変化によって個々が働きづらくならないような制度設計を意識しています。

弊社は評価もフェアに考えていて、仕事に対して結果を出して、本人の意志があれば子育て中の社員でも管理職へ登用するスタンスがあります。制度や評価といった環境の基盤には、「仕事もプロ、家族もプロ」という弊社のバリューが反映されたものであるよう意識しています。

 

育休を取ったからこそわかった「個人に依存しない仕組み」の大切さ

———平岡さんは現在、カラダノートで幅広い業務をご担当されていますね。別の企業から転職してカラダノートに入ったと伺いましたが、そのきっかけはどういったものでしたか。

平岡:ちょうど、前の会社でプロジェクトが終わる局面だったんです。そこで次の自分のキャリアを考えたときに、もう少し企業の成長支援にコミットできる環境であること、自分ごととして考えられる領域に行きたいと思いました。

当時、1人目の子育てもしていたので、カラダノートの事業内容にも非常に興味がありました。弊社の代表の佐藤と年齢も1つ違いでお互い子育てをしていたので、共感できたところが非常に大きいです。

———男性で子育てにフィーチャーして、それをきっかけに転職先を選んだり、育休を取ったりするのは世代的にも珍しいのかなと思いました。編集部には男性が育休を取ろうとして、嫌な顔をされた経験のある者もいますので……。

平岡:自分が4人兄弟であるのが、非常に大きい気がしますね。自分が子育てを経験して初めて、「4人も育てた母はすごいな」と感じて……。

妻も子育てで大変そうにしてたので、漠然と「ここに課題があるんだろうな」と感じていました。

———育休から復帰してから、仕事に対する見方やキャリア観に何か影響はありましたか。

平岡:自分の時間と仕事の時間を、切り替えられるようになりましたね。

カラダノートに入ったときにカルチャーショックだったのが、自分の時間と仕事の時間のメリハリをつけている社員が多いところでした。

私はこれまで、夜遅くに帰るのが普通だったんです。でもカラダノートに入ったとき、社長から「うちの会社は残業もほとんどないし、基本的にはON/OFFの切り替えを大切にと言っているから、みんな残業しないんだよ」と聞いて。

———ベンチャー企業の中では、珍しい社風ですよね。

平岡:そうなんですよ。ベンチャー企業だしパフォーマンス重視だろうと思ってカラダノートに入社したんですけど、19時以降に残っている方が全然いなくて……。

ですから最初は、「本当にその時間に帰ってもいいのか?」と葛藤がありました。

———それによってマネジメント上の見方が変わったとか、ご自身のお仕事のアクションに対して何か影響をおよぼされた点はありますか?

平岡:「他社に負けないパフォーマンスを会社が出すために、個人に依存する仕組みをどうリカバリーするか」を念頭に置きながら、業務や組織を考えるようになりました。

仕事をしていると、当然結果にこだわらないといけない部分はあります。でも一方で、子どもの都合で休む必要があることも当然発生しますよね。私自身も、妻が子どもを見てくれているとはいえ、突然そういう事態になることもあるので。

そうした体制構築の正解がまだわかっていないので、悩みながらではありますが。

———よくわかります。お仕事を休んで、お子さまの学校行事に出られることもありますか?

平岡:ありますよ。時間帯にもよりますけど休みを取ることもありますし、出社が午前だけ・午後だけのときもあります。

カラダノートは、子どもの運動会やお遊戯会に参加するために、事前に調整したうえで休みを取れるのが当たり前の環境なんです。

あとはフレックス制を導入していて、月の労働時間を満たせば自由な時間で働けます。ですから、前の週に多めに働いて、その日は早めに帰るといった感じでコントロールもできるんです。

———フレックスだと、自分の努力でクリアしやすそうですね。

平岡:一日8時間、9時から18時頃まで在社しなさいと固定されると、動きづらい部分がありますよね。私自身、在宅制度と組み合わせながら働かせていただいています。

 

制度設計においてもPDCAを重視し、積極的に改善する

———カラダノートで組織改善に取り組もうとしたとき、課題に感じたことは何でしたか?

平岡:明確な評価制度がなかったことです。

先ほどお伝えしたように、カラダノートにはもともと「仕事と家庭を意味切り分けて、それぞれプロフェッショナルを持ってやりましょう」という思想があったんです。

でも私が入社した当時はきちんとした評価制度がなく、360°評価しかなくて。居心地はすごく良かったものの、会社の成長の土台をつくっていかなければいけないフェーズでは、なかなかうまく機能しませんでした。

———それを、どのように変えていったのでしょうか。

平岡:個人やキャリアの成長に目標がなかったので、そこを2~3年かけて設計しました。

以前の居心地が良かった環境が好きで、評価制度を導入したことをきっかけに辞めた人もいらっしゃいました。でも会社としては、社会課題のために成長する必要があります。ON/OFFを切り替える働き方はもちろんですが、生産性も意識しないといけませんので。

———全員が即座に受け入れられた訳ではなかったんですね。

平岡:そうですね。

あともう1つ課題だったのが、なんでも受け入れる姿勢だけつくっても効果がないということでした。

一時期、子連れ出社をOKにしたことがあったんですよ。でも、それを前提に採用したけど2ヵ月ぐらいで退職した方もいて。受け入れる会社側はなんでもOKでしたけど、来る側はそうではなかったんですね。

子どもを連れて満員電車で出勤するのも大変だし、子どもの寝つきが悪くなったり、食べるものも変わってしまったりしたそうで……。

———理想と仕組みがセットで整っていないと難しいですね。従業員の皆さんから、「こんなふうにしてほしい」であるとか、「こうなったらもっと働きやすいのに」といった話は入ってくるものですか?

平岡:たまにアンケートを取ったり、人事系の部署に直接相談があったりはしていますね。そこでいろいろなアイデアをいただいて経営会議でディスカッションしながら、どのような内容にするかを決めて社内に告知しているんです。

会社の事業でPDCAを回すのと一緒で、制度設計もPDCAを回して進めています。

 

今後の展望:企業として、社員の「限られた時間」を考える

———いろいろなライフステージや状況の社員がいる中で、平岡さんの立場における今後の方向性や展望はありますか?

平岡:会社としては、いかに個人のキャリアの成長を支援できる制度を設計していくかが一番重要だと考えています。

カラダノートでは、評価制度や福利厚生も含めて、半年1回程度は制度の見直しをしているんです。見直しながら毎回従業員に説明して、説明するときも「これが完全体ではない」と事前に説明したうえで、日々より良くしていくようにしています。

———なるほど。直近で取り組まれている会社や組織の課題はありますか。

平岡:会社の生産性をどう図るか、ですね。

全社員の工数管理はしていて、どの事業でどのくらい使ったのか集計して、どのくらいの生産性になっているか、サービスごとにわかるようにはしています。

でもまだデータ収集・分析の段階で止まっている状況です。そこから事業にプラスになる提案もできるようになってくると、より良くなると思っています。まだ始めたばかりですので、これからどんどん挑戦していきます。

———ありがとうございます。平岡さんがカラダノートの運営で意識している点を教えてください。

平岡:カラダノートの今のビジョンは、「家族の健康を支え、笑顔を増やす」です。それをもとにバリューや行動指針も見直し、現在はこの3つを掲げて会社運営をしています。

  • 仕事のプロ・家族のプロ
  • 成長は幸せ。成長した方が楽しいし、自分ができることも増えてより幸せになれる
  • 失敗も含めて、すべてはビジョンの実現に向けたストーリー

ビジョンだけが先行してしまうと「仲良しこよし」のイメージができてしまうかもしれません。

でも仕事はビジネスであり、慈善事業ではありません。会社はもっと大きくなって、サービスを拡大していかなければいけませんので。

ですから今は、仕事におけるプロフェッショナリズムと、一方で家庭とのバランスを意識できる人、そんな環境で働きたい人にとっては非常にいい環境は整えられていると思います。

———「家族のプロ」って、すごいですね。定義が難しくはないでしょうか。

平岡:そこは人それぞれ形が違うので、定義も各自で違うと思います。

でも、子どもがいなくても自分は誰かの子どもだったし、家族というコミュニティの中に属していますよね。共通しているのは「仕事と家庭において、限られた時間をどう使うか」です。

私は地元を離れていますので、両親の寿命を考えると、子どもと会える回数はあと何回かしかないと思っています。ですから企業としても、社員個々人の「限られた時間」をどう使うかを考えられるようにしていきたいですね。

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