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106万円の壁撤廃とは?2026年10月からパートの社会保険はどう変わる?
2026.10.15
2026年10月1日、パートやアルバイトで働く人の社会保険の加入ルールが変わりました。「106万円の壁」と呼ばれてきた月額8.8万円以上という賃金の条件が撤廃され、これからは主に「週20時間以上働くかどうか」で加入が決まります。
保育園のお迎えに間に合う時間で働きたい、子どもが小学校に上がったら少し勤務を増やしたい……。子育て中は、家族の予定に合わせて働き方を選んでいる方も多いのではないでしょうか。そんなときに気になるのが「扶養から外れるの?」「手取りは減るの?」という点ですよね。
この記事では、106万円の壁撤廃で何が変わったのか、社会保険に入るとどんな保障があるのか、そして子育て世帯が今のうちに確かめておきたいことを、厚生労働省や日本年金機構の情報をもとにわかりやすく整理します。
この記事はこんな方にオススメ
- パート・アルバイトで働きながら子育てをしている方
- 「106万円の壁がなくなる」と聞いて、手取りや扶養が気になっている方
- 来年度に向けて、勤務時間を増やすか減らすか迷っている方
もくじ
1. 106万円の壁撤廃とは?2026年10月に何が変わったの?
「106万円の壁」とは、パートの方が勤め先の社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する条件のひとつだった「所定内賃金が月額8.8万円以上」を、年収に置き換えた呼び方です。8.8万円×12か月がおよそ106万円になることから、こう呼ばれてきました。法律に「106万円」と書かれていたわけではありません。
2025年に成立した年金制度改正法により、この賃金の条件が2026年10月1日に撤廃されました。日本年金機構も、同日付で賃金要件が撤廃されたことを案内しています。
なぜ「壁」がなくなったの?
背景のひとつが最低賃金の上昇です。厚生労働省によると、2026年度の地域別最低賃金は全国加重平均で時給1,177円(前年度より56円アップ)となり、10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに順次発効します。
たとえば時給1,100円で週20時間働くと、1か月はおよそ9.5万円(1,100円×20時間×52週÷12か月で計算した目安)。最低賃金以上で週20時間以上働けば、多くの場合はすでに8.8万円を超える状態になっていたため、「年収」ではなく「働く時間」で判断する形に整理された、と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。
2. 撤廃後もパートが社会保険に入る4つの条件
賃金の条件はなくなりましたが、誰でも加入になるわけではありません。2026年10月以降、パート・アルバイトの方は、次の条件をすべて満たすと勤め先の社会保険に加入します。
- 週の所定労働時間が20時間以上(契約で決まっている時間。残業は原則含みません)
- 2か月を超えて雇用される見込みがある
- 学生ではない(休学中や定時制・通信制の方などは対象になります)
- 勤務先の規模の条件を満たしている(2026年10月時点では、厚生年金の被保険者数51人以上の会社など)
「週20時間」は契約書で確認しましょう
判断の基準になるのは、実際に働いた時間ではなく、雇用契約書や労働条件通知書に書かれた所定労働時間です。ただし、厚生労働省は「常に残業が発生している場合などは含むことがある」としています。ご自身の契約が「週19時間」なのか「週20時間」なのか、一度手元の書類を見てみてはいかがでしょうか。
51人未満の会社でも加入できる場合があります
従業員数50人以下の会社でも、労使で合意して申し出れば、パートの方を社会保険の対象にできます(任意特定適用事業所)。勤め先がどちらにあたるかは、職場の担当者に聞くのが確実です。
3. 勤務先の規模の条件も、2027年10月から段階的に広がります
今回の改正では、賃金の条件だけでなく勤務先の規模の条件も、時間をかけて縮小されることが決まっています。今は小さな職場で働いていて対象外の方も、数年後には加入対象になるかもしれません。
| 時期 | パートが加入対象になる会社の規模 |
|---|---|
| 2027年9月まで | 51人以上 |
| 2027年10月から | 36人以上 |
| 2029年10月から | 21人以上 |
| 2032年10月から | 11人以上 |
| 2035年10月から | 10人以下も対象(規模の条件がなくなる) |
子どもが小さいうちは近所の小さなお店で、と考えている方も多いかもしれません。いま決める働き方が数年先にどう変わるかも、頭の片隅に置いておくと安心です。
4. 社会保険に入ると手取りは減る?受けられる保障は?
いちばん気になるのは、やはり手取りではないでしょうか。社会保険に加入すると、健康保険料と厚生年金保険料を会社と折半で負担するため、扶養の範囲で働いていた方は手取りが減ります。
厚生労働省の試算(月給98,000円の場合)では、手取りの目安は次のとおりです。
| 働き方 | 健康保険料 | 年金保険料 | 手取り(概算) |
|---|---|---|---|
| 国民健康保険・国民年金 | 3,200円 | 18,000円 | 76,300円 |
| 配偶者の扶養の範囲 | 0円 | 0円 | 97,500円 |
| 勤め先の社会保険に加入 | 5,000円 | 9,000円 | 83,500円 |
※雇用保険料(500円)を含めた概算です。住民税は含まれず、実際の金額は給与の内訳や地域によって異なります。
扶養の範囲と比べると月14,000円ほど減りますが、自分で国民年金・国民健康保険に入っている方にとっては、逆に手取りが増えるケースもあります。
加入すると受けられる主な保障
- 傷病手当金:病気やけがで仕事を休み、給与が出ないとき、休業4日目から通算1年6か月まで、給与のおよそ3分の2が支給されます
- 出産手当金:出産のために休んだ期間(出産日以前42日〜出産日後56日)、給与のおよそ3分の2が支給されます
- 厚生年金:将来の老齢年金が国民年金に上乗せされるほか、障害や万一のときの保障も手厚くなります
- 産休・育休中の保険料免除:申し出により本人・会社の保険料がともに免除され、その期間も保険料を納めたものとして年金額に反映されます
【POINT】「手取りが減る=損」とは限りません
社会保険に加入すると、毎月の手取りは減る一方で、病気・出産・老後への備えが厚くなります。特に出産手当金や産休・育休中の保険料免除は、これから家族が増える可能性がある方には大きな安心材料です。手取りの金額だけでなく、「もしものときの保障」も含めて比べてみてはいかがでしょうか。
会社が保険料を多めに負担してくれる場合も
2026年10月以降に新たに適用対象となった事業所などでは、標準報酬月額12.6万円以下の短時間労働者について、会社が保険料を半分より多く負担できる「保険料調整制度」が設けられています(通算3年間)。使うかどうかは会社が決めるため、勤め先に確認してみましょう。
5. 「130万円の壁」や配偶者の扶養はどうなる?
混同しやすいのが「130万円の壁」です。これは、配偶者などの健康保険の扶養(被扶養者)に入れるかどうかの目安で、今回の改正後も残っています。
2つの「壁」の違い
- 106万円の壁(撤廃):自分の勤め先で社会保険に入るかどうかの条件。今後は「週20時間以上」などで判断
- 130万円の壁(継続):家族の扶養に入れるかどうかの目安。年間収入が130万円未満などが条件
つまり、年収が130万円未満でも、週20時間以上などの条件を満たして勤め先の社会保険に加入すれば、配偶者の扶養からは外れることになります。「年収を抑えていれば大丈夫」とは言い切れなくなった点に注意が必要です。
扶養の判定は「契約内容」で見る形に
日本年金機構によると、2026年4月1日以降、健康保険の扶養に入れるかどうかは、労働条件通知書などに書かれた賃金から見込まれる年間収入で判定する取り扱いが始まっています。なお、税金の配偶者控除などの「壁」は別の仕組みです。詳しい条件は加入している健康保険や勤め先に確認しましょう。
6. 子育て中のパートが今やっておきたい4つのこと
制度が変わったときこそ、わが家の働き方を見直すチャンスです。次の順番で確かめてみてはいかがでしょうか。
ステップ1:契約の「所定労働時間」を確認する
まずは雇用契約書や労働条件通知書で、週の所定労働時間を確かめます。シフトで毎週の時間が変わる方は、契約上どう決まっているかを職場に聞いておくと安心です。
ステップ2:勤め先が対象になるか聞いてみる
勤め先の規模の条件を満たしているか、自分が10月以降加入対象になるかは、職場の担当者が把握しています。家族手当など、配偶者の会社の手当が扶養を条件にしていないかもあわせて確かめておきましょう。
ステップ3:手取りと保障をシミュレーションする
厚生労働省の「社会保険適用拡大特設サイト」には、手取り額の変化や将来の年金額を試算できるツールが用意されています。数字で見ると、話し合いがぐっと進めやすくなります。
ステップ4:家族で働き方を話し合う
「週20時間を超えて働いて保障を厚くする」「今は時間を抑えて子どもとの時間を優先する」など、正解は家庭ごとに違います。子どもの成長や保育園・学童の状況も踏まえ、パートナーと一緒に考えてみてください。
7. まとめ:106万円の壁撤廃をきっかけに、わが家の働き方を考えよう
最後に、この記事のポイントをおさらいしましょう。
- 2026年10月1日、社会保険の加入条件から「月額8.8万円以上(106万円の壁)」がなくなった
- 今後は「週20時間以上」「2か月超の雇用見込み」「学生でない」「勤務先の規模」で判断
- 勤務先の規模の条件は2027年10月から段階的に縮小し、2035年10月にはなくなる
- 加入すると手取りは変わるが、傷病手当金・出産手当金・厚生年金などの保障が厚くなる
- 家族の扶養の目安「130万円の壁」は今も残るため、両方をあわせて確認する
「壁」という言葉があると、つい「超えないように」と考えてしまいがちです。でも、制度が変わった今こそ、手取りと保障、そして家族の時間のバランスを見直すよい機会ではないでしょうか。わが家に合った働き方を、無理なく選んでいきましょう。
出典・参考:
日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」
厚生労働省「社会保険加入の要件|社会保険適用拡大特設サイト」
厚生労働省「社会保険加入のメリット|社会保険適用拡大特設サイト」
厚生労働省「手取り額の変化について|社会保険適用拡大特設サイト」
厚生労働省「令和8年度最低賃金額答申」
日本年金機構「保険料調整制度の概要」
日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定」
日本年金機構「産前産後休業保険料免除制度」











