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週休3日制とは?導入企業の事例やメリット・デメリット、子育てへの影響を解説
2022.12.20
ワークライフバランスが重要視されるにともない、週休3日制が注目を集めています。子育てをするママやパパのなかには、週休3日制の概要が気になっているという方も多いのではないでしょうか。
この記事では週休3日制のメリットやデメリット、また実際の導入事例についてもご紹介します!週休3日制が子育てに及ぼす影響についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事はこんな方にオススメ
- 週休3日制の概要を知りたい人
- 週休3日制が子育てに与える影響を知りたい人
- 週休3日制の事例を知りたい人
もくじ
1 週休3日制とは
週休3日制とは、文字通り1週間のうち休日を3日設ける制度です。日本の休日制度は「週休2日制」や「完全週休2日制」が一般的ですが、週休3日制を取り入れる企業も徐々に増えつつあります。
育児と仕事を両立するのはなかなか大変です。週休3日制を導入すれば、家で過ごせる時間が増えるため、ママやパパの家事や育児の負担も軽減されるでしょう。
また企業にとっても、人手不足の解消や生産性の向上といったメリットがあるため、近年注目されている制度です。
2 週休3日制の3つの仕組み
週休3日制には以下の3つの仕組みがあります。
- 給与減額型
- 総労働時間維持型
- 給与維持型
どの仕組みを採用するかは企業の自由であるため、労働者はそれぞれの仕組みをよく理解しておく必要があるでしょう。
ここではそれぞれのメリットやデメリットを詳しく見ていきます。
2.1 給与減額型
給与減額型は、労働時間が減った分だけ給与も減る仕組みです。1日の労働時間は維持され、週の休日が1日増えます。
1日の労働時間は週休2日制と変わりません。子育てをするママやパパにとって負担が少ない働き方と言えるでしょう。ただし、総労働時間が減るため給与も減額されます。家計が厳しくなる可能性がある点には注意が必要です。
2.2 総労働時間維持型
総労働時間維持型とは、1日の労働時間を増やすことで週休2日制の給与を維持する仕組みです。週休2日制の労働時間は「1日8時間×5日」が一般的ですが、総労働時間維持型では1日10時間×4日働きます。週の総労働時間は変わらないため、給与は週休2日制と同額です。
1日の労働時間は長くなりますが「それでも週休3日がいい!」という方にはおすすめの働き方と言えるでしょう。
2.3 給与維持型
給与維持型とは、労働時間を減らしつつ週休2日制の給与を維持する方式です。1日8時間×5日働いていた人でも、1日8時間×4日の労働で週休2日制と同額の給与を得られます。時間もお金も必要なママやパパにとって最も魅力的な働き方でしょう。
ただし5日でこなしていた仕事を4日でこなさなければならないため、生産性や効率を上げる必要があります。今まで以上にスキルアップや仕事の効率化に励む必要があるでしょう。
3 週休3日制を導入している国
日本だけでなく、世界でも週休3日制は広がりつつあります。特にヨーロッパでは週休3日制が政治の中心的話題として挙げられており、積極的に試験導入されている段階です。
ここでは既に大きな成功を収めたアイスランドの導入事例を始め、その他諸国の導入事例と経過を見ていきましょう。
3.1 アイスランド
アイスランドでは2015年から2019年にかけて、労働者人口の約1%である約2,500名を対象に、週休3日制が試験導入されました。この試験導入には「給与維持型」が採用されており、給与は従来と同水準のままで労働時間が週40時間から35~6時間に引き下げられました。
生産性が維持・向上したとされるなかで、幸福度も劇的に高まった点が注目ポイント。試験導入は「圧倒的な成功」と評価され、2021年7月時点で国内の労働者の約86%が週休3日制を選択しています。
3.2 スペイン
スペインでは、2022年から政府主導の下で週休3日制が試験導入されています。アイスランドと同様「給与維持型」が採用され、週の労働時間は40時間から32時間に引き下げられました。試験導入の期間は3年であり、終了後に法制化が議論される予定です。
3.3 ベルギー
ベルギーでは2022年2月に、社員が週休3日制を選択できる改革案が閣議決定されました。「総労働時間維持型」が採用され、1日の労働時間を増やし週の労働時間は変えない方針です。
社員は週休2日制か週休3日制を選択可能であり、企業は基本的に社員の決定を拒否できません。週休3日制を選択した場合は、6ヶ月間試験導入を実施したのちに、週休3日制にするか最終決定する予定です。
3.4 イギリス
イギリスでは2022年の6月から6ヶ月間、70社以上の約3,300名を対象に週休3日制を試験導入しています。「給与維持型」が採用され、6ヶ月間の試験導入後に生産性や社員の意欲などの変化を調査する予定です。
紹介した4つの国はいずれも、国際的な調査でわかった「子育てしやすい国ランキング」で日本より上位にランクインしています。
アイスランド 1位
スペイン 17位
ベルギー 9位
イギリス 23位
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日本 25位
※ 参考:「子育てしやすい国ランキング2020 (The Best Countries For Raising A Family In 2020) 」|Asher & Lyric
4 日本での導入状況
日本では大企業を中心に、週休3日制が徐々に導入されています。厚生労働省により実施された就労条件総合調査によると、週休3日制を取り入れている企業は2020年時点で全体の8.3%、2021年時点で8.5%という結果になりました。
また「労働生産性の国際比較2021」によると、日本の時間当たりの労働生産性はOECD加盟国38ヵ国中23位、主要先進国(G7)7ヵ国中最下位と、非常に低迷しています。政府はこの解決策として週休3日制を推奨しているため、今後導入する企業はさらに増えるでしょう。
参考
厚生労働省「令和2年就労条件総合調査の概況」
公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」
5 日本での導入事例
日本でも徐々に広がりつつある週休3日制ですが、導入の仕方はさまざまです。労働時間や給与、休日の指定方法などの細かい規定は企業によって異なります。
具体的に、3つの企業の導入事例を見ていきましょう。
5.1 佐川急便
佐川急便では、2017年から週休3日制の導入をスタートしました。1日当たりの労働時間を延長する「総労働時間維持型」を採用しており、社員は週休2日制と週休3日制を選択可能です。
週休2日制の場合は1日8時間、週休3日制の場合は1日10時間を所定労働時間と定めています。
ドライバーの人材不足改善を目的とし、週休3日制を選択した社員のみ副業が可能です。シフト勤務のため、休日は不定休です。
5.2 みずほフィナンシャルグループ
みずほフィナンシャルグループは、2020年より週休3日制を導入しています。1日当たりの労働時間を変えずに休日を増やす「給与減額型」を採用。週休3日制と合わせて週休4日制も選択可能です。
休日は土日とは別に、決まった曜日を指定できます。週休3日制を選択した場合、給与は従来の2割減、週休4日制の場合は4割減です。
5.3 ファーストリテイリング
ユニクロを運営するファーストリテイリングは、2015年より週休3日制を導入しました。佐川急便同様「総労働時間維持型」を採用しており、1日当たりの労働時間は増えますが、給与は週休2日制と同水準です。
地域正社員を対象とし、希望する社員は週休3日制を選択できます。休日は平日に3日取得する規定です。
6 週休3日制のメリット
週休3日制は会社・社員どちらにもメリットがありますが、ここからは、会社側・社員側それぞれのメリットを解説します。
6.1 会社側
会社側のメリットは「社員のモチベーション向上」「イノベーション促進」「離職率低下」「コスト削減」の4点です。
<社員のモチベーション向上>
週休3日制のメリットとしてまず挙げられるのは、社員のモチベーション向上です。週休3日制では最低でも、年間156日の休日を確保できます。
休養がとりやすくなると同時に、家庭の時間や趣味といったプライベートも大切にできるようになるため、仕事へのモチベーションが高まるでしょう。
<イノベーション促進>
休日が増えることでイノベーション促進が期待できるでしょう。プライベートな時間が増えれば、会社以外の人とのコミュニケーション機会も増えます。社外の人と接するなかで、新しいアイディアが思いつきやすくなるでしょう。
副業や勉強がOKな会社であれば、得たスキルを会社でも活かせます。社員それぞれがスキルや知識を持ち寄れば、新しい商品やサービスが生まれるかもしれません。
<離職率低下>
週休3日制の導入は離職率の低下につながると言えます。働いているママやパパにとって、仕事と育児の両立は難しいのが現状です。
週休3日制を利用できれば、これまでやむを得ず退職していたママやパパも、育児と仕事を両立できる可能性が広がります。
<コスト削減>
週休3日制を取り入れることで、コスト削減が望めます。オフィスで発生する光熱費を削減できると同時に、社員の出勤に必要な交通費も削減可能です。
また、休日が増えることで社員の生産性が向上し、残業代などの人件費削減につながる可能性もあるでしょう。
6.2 社員側
社員側のメリットは「ワークライフバランスの実現」「心身の健康維持」「子育てや介護との両立」の3点です。
<ワークライフバランスの実現>
週休3日制を利用できれば、ワークライフバランスを実現しやすくなります。週2日の休みでは「休養にしか時間を使えない」という方も多いのではないでしょうか。
もう1日休みが増えることで、趣味や娯楽を楽しむ余裕が生まれプライベートが充実します。プライベートの充実はリフレッシュにつながるため、仕事にもいい影響を与えるでしょう。
<心身の健康維持>
週休3日制は心身の健康維持につながるでしょう。休養できる時間が増えると同時に、仕事を通じたストレスも低減できるため、うつ病や自律神経失調症といった心身症の発生リスクを抑えられます。
ニュージーランドのパーペチュアル・ガーディアン社が実施した週休3日制の試験導入結果では、試験導入実施前よりもストレスレベルが7%減少したと報告されました。毎日の健康と休日数は切っても切れない関係にあるのです。
参考
週休3日制を2ヶ月実験したニュージーランド企業、成功の要因は組織風土にあり
<子育てや介護との両立>
休日が増えれば、子育てや介護との両立が可能になります。週休2日制では子育てや介護をこなすのに追われ、休養できないという方も多いでしょう。
休みが1日増えることで子育てや介護に余裕を持って取り組めると同時に、休養できる時間も増えます。育児や介護の疲れを仕事に響かせないことが、仕事との両立の鍵と言えるでしょう。
7 週休3日制のデメリット
ここからは、会社側・社員側それぞれに分けてデメリットを解説します。
7.1 会社側
会社側のデメリットは「ビジネス機会の損失」「生産性低下の可能性」の2点です。
<ビジネス機会の損失>
出勤日数が減ると、ビジネス機会を損失する可能性があります。会社でしかメールや電話対応ができない場合、やりとりにタイムラグが生じるため、取引先からの信用が落ちてしまうことも。
取引先からの信用が落ちないよう、事前に週休3日制で働いていることを伝えておくといいかもしれません。
<生産性低下の可能性>
週休3日制の採用は生産性を高めるばかりではありません。出勤日数が減ることで1日の業務負担が大きくなり、集中力が下がる可能性もあります。
また、社員同士のコミュニケーション回数が減ることで業務がストップしてしまう場合もあるでしょう。
誰かが休みでも業務に滞りが起きないように、日頃から社員同士でコミュニケーションをとっておく必要があります。
7.2 社員側
社員側のデメリットは「給料が少なくなる」「稼働日の負担が増える」の2点です。
<給料が少なくなる>
週休3日制では、給料が少なくなる可能性が高い傾向です。「給与減額型」を選択した場合、週休2日制の給与の何割かは減額となります。
また「総労働時間維持型」を選択した場合は1日の労働時間が長くなり、残業が少なくなるため、週休2日制で得ていた残業代が減ってしまうでしょう。
「給与維持型」であれば給与は少なくなりませんが、残念ながらこの仕組みはまだ日本では普及していません。給与が少なくなる可能性の方が高いと認識しておきましょう。
<稼働日の負担が増える>
週の出勤日が減るということは、稼働日の負担が増えるという意味です。「総労働維持型」では1日の労働時間が8時間から10時間に増えるため、1日の体力的負担が大きくなります。
また、5日でこなしていた仕事を4日でこなすには、週休2日制よりもスピーディーに仕事を進める必要があります。1日に終わらせるべきことが増えるため「今日中に終わるだろうか」という精神的不安も募りやすくなるでしょう。
8 週休3日制が子育てに与える影響
週休3日制は子育てに良い影響も悪い影響も与えます。家族の時間やコミュニケーションにおいては良い影響を与えますが、収入や家事などの物理的問題には悪い影響を与えてしまう可能性もあるのです。
ここでは良い影響・悪い影響それぞれについて詳しく見ていきましょう。
8.1 子育てに割ける時間が多くなる
毎日忙しいママやパパにとって、休日が増えることは大きなメリットです。子育てに割ける時間が増え、より丁寧に子どもと向き合えるようになります。
週2日の休みでは家事をこなすのに必死になりがちですが、あと1日あれば子どもと遊んだり出かけたりする余裕も生まれるでしょう。
また授業参観や運動会などのイベントに参加できる可能性も高まり、子どもの成長を見守る環境が作れます。
8.2 コミュニケーション機会が増える
子どもとのコミュニケーション機会が増えるのも、子育てにおいて大きなメリットでしょう。仕事と育児を両立しているパパやママは、子どもとのコミュニケーションがどうしても少なくなりがちです。
休みが増えると子どもと過ごす時間が増えるため、たくさんコミュニケーションをとれるようになります。コミュニケーションの機会が増えれば子どもは安心感を覚えるため、親子の絆も深まるでしょう。
子育てを終えた先輩パパママの多くが、「子どもとの時間をもっと味わえばよかった」と後悔するそうです。
子どもが子どもらしくいてくれるのは、ほんの数年。目いっぱい子育てを楽しむためにも、週休3日制は良い選択肢かもしれません。
8.3 収入が減少する
週休3日制を選択すれば収入が減少する可能性があります。子育てにはお金がかかるため、これは大きな痛手と言えるでしょう。
一般的に子どもの教育費は、20歳までに2,000~4,000万円かかると言われています。短期的に見れば問題が無いように見えても、長期的に見ると生活に困窮する可能性も出てくるかもしれません。
教育費を支払いつつ生活も維持できる収入なのか、事前にシミュレーションしたうえで、週休3日制を選択する必要があるでしょう。
8.4 家事の負担が増える
家での時間が増えれば、それに伴い家事の負担も増えてしまいます。家族で協力しあって家事をこなせば問題ありませんが、小さい子どもには難しいでしょう。
ママとパパどちらかの負担が大きくならないよう、家事の分担や方針についてしっかりと話し合うことが大切です。
9 まとめ
この記事では、週休3日制の仕組みやメリット・デメリットについて詳しく紹介しました。子育て中のママやパパにとって、週休3日制はメリットが大きい仕組みです。
もし週休3日制を選択できる場合には、家庭内のメリット・デメリット双方の側面を理解したうえでベストな選択ができるよう、家族みんなで話し合ってみましょう。
この記事を書いた人
hauska編集部
料理、美容、ガジェット好き。最近はインテリアとQOL関連アイテムへの興味関心が爆上がり中。働くパパ・ママに向けて、生活の質の向上、楽しい子育て、仕事もプライベートも充実させるための情報など幅広く発信します。ライフハックに気軽に取り組んでいただければ幸いです。