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モンテッソーリ教育とは?教育方針や受けるメリットを解説
2023.04.07
幼児教育の一つとして、「モンテッソーリ教育」に年々注目が集まっています。小さい子供を育てているパパやママのなかには「モンテッソーリ教育って何?」といった疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、モンテッソーリ教育の概要や使っている教具などを解説していきます。子供の教育に興味を持っている方は、ぜひ参考にしてください。
この記事はこんな方にオススメ
- 幼児教育の「モンテッソーリ教育」とは何か知りたい人
- 幼児教育の方針で幼稚園を決めたい人
- モンテッソーリ教育が何を大事にしているのかを知りたい人
もくじ
1 モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育は、イタリアの医師であったマリア・モンテッソーリ氏が子どものために考案した教育法です。
モンテッソーリ教育は、従来の学校教育のような知識を与える教育とは違い、「子供が自ら選択し、自ら力を伸ばしていくための環境を整え、見守る」ことを大切にしています。
その歴史は100年以上あり、今では世界各国でも支持されているのです。
近年では、日本でも取り入れる施設やモンテッソーリ教育を受けた著名人が増えてきています。将棋の藤井聡太棋士が、幼少期にモンテッソーリ教育を受けていたのは有名なエピソードですよね。
1.1 モンテッソーリ教育の創始者は「マリア・モンテッソーリ氏」
モンテッソーリ教育をはじめたマリア・モンテッソーリ氏は、ローマ大学最初の女性医学博士でした。同氏は大学卒業後、障害児の治療教育に携わり大きな成果を挙げています。
モンテッソーリ氏は、みずからが学んだ内容を健常児教育にも活かせると考え、保育施設『こどもの家』を始めます。そこでの実践から生まれたのが「モンテッソーリ教育法」です。
1.2 モンテッソーリ教育の歴史
モンテッソーリ教育の歴史は100年以上前にさかのぼります。1907年、ローマに誕生した「こどもの家(Casa dei bambini)」は、欧米を中心に世界各国に広がりました。特にアメリカでは2度のモンテッソーリ・ブームが起こり、今では3,000か所のこどもの家があるといわれています。
日本にモンテッソーリ教育が伝えられたのは1960年代です。現在は全国に、モンテッソーリ・プログラムを導入する幼稚園や保育園、モンテッソーリ教育専門施設があります。
1.3 モンテッソーリ教育を受けた著名人
世界には、モンテッソーリ教育を受けた著名人が数多くいます。
代表的な著名人は、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏、アメリカ元大統領のバラク・オバマ氏、Amazonの創業者ジェフ・ベゾス氏などです。
イギリス王室のヘンリー王子やウィリアム王子も、モンテッソーリ教育を受けています。
日本では最近まであまり知られていなかった教育法ですが、将棋の藤井聡太棋士が幼少期にモンテッソーリ教育を受けていたことが話題となり、広く知られるようになりました。
モンテッソーリ教育では、その子の持つ個性や才能を開花させるサポートができると言われています。個性や才能にフォーカスする独自の方針が、さまざまな分野で世界をリードする人を数多く輩出できた理由なのではないでしょうか。
2 モンテッソーリ教育の基本的な考え方
モンテッソーリ教育の基本的な考え方は「子どもには生来、自立・発達していこうとする力(自己教育力)があり、その力が発揮されるためには発達に見合った環境(物的環境・人的環境)が必要である」というものです。
ここからは、モンテッソーリ教育の基本的な考え方を3つ紹介していきます。
2.1 自己教育力
「自己教育力」とは、自分自身を育てる能力のことで、子どもみんなに備わっている能力とされています。
たとえば、生まれたばかりの赤ちゃんには、おっぱいや哺乳瓶に吸いつこうとする力や泣いて気持ちを訴える力があるでしょう。
そこから数ヶ月でみるみるうちに、ママやパパの姿を目で追ったり、身近にあるものに触れ・握る、お座りやハイハイをする、1歳前後には言葉を理解してお喋りができるようにもなります。
それは大人が教え込んでできるようになるわけではなく「自分の力で発達していくプログラムが最初から組み込まれている」からできているのだとモンテッソーリ教育は指摘します。つまり、自立や発達の原動力は子ども自身に内在しているとの考え方です。
2.2 敏感期
モンテッソーリ教育には、「敏感期」との考え方があります。
この「敏感期」を簡単に表現すると、「自分の能力を伸ばそうとして、一つのことに夢中になる時期」です。子どもが敏感期にとる行動は、大人にとっては一見困ったイタズラに思えることがあります。
たとえば、ティッシュをひたすら引き抜く行動やテーブルの物を床にすべて落とす行動。また、いつもと違う道を通ろうとしたら大泣きしてしまうなど、親から見たら困った行動に映ってしまいます。
しかし、実はそうした行動は「自分に今必要な能力を伸ばそうとするため」にとても重要なのです。
ティッシュを引き抜く行動は、親指・人差し指・中指の3本の指の運動を習得するために。道順にこだわるのは、秩序を守って社会を理解しようとするために必要な行動です。敏感期にいる子どもは、さまざまな事柄についてどんどん吸収し、伸びていくと言われています。
敏感期がすぎると、そのすさまじい吸収力は失われてしまいます。そのため、敏感期にはどのようなものがあり、どのような形で現れるのかを周りの大人が事前に知っておくことが子どもの発達をサポートする上で非常に大事です。
敏感期には「言語」「運動」「秩序」「感覚」「数」「文化・礼儀」などの種類があります。書籍によって、敏感期を6種類とするか9種類とするかなど、いくつか考え方があります。
2.3 環境
子どもは「自己教育力」によって自然に成長・発達していきますが、それには「環境」がとても重要です。ここでいう環境とは、「子どものまわりのもの全て」を指します。
モンテッソーリ教育では、家具(机や椅子、棚など)や小物(おもちゃや絵本、食器など)といった物的環境だけでなく、保護者や教師など子どもが接する人的環境も重要視しているのです。
「敏感期」は、現れる目安となる年齢・月齢があります。敏感期に見合った「環境」があれば、子どもは自発的に活動します。その活動を何度も繰り返すことによって、自分の能力を開花させていくのです。
モンテッソーリ教育では、日常行う活動のことを「お仕事」と呼びます。敏感期の種類によってさまざまなお仕事があり、少しずつ自分自身の能力を伸ばしていくのです。
モンテッソーリ教育では、「Help me do it myself(自分でできるようになるのを手伝って)」という言葉を大切にしています。あくまで行動するのは「子ども」。大人は子どもをよく観察し、発達の段階に合わせて環境(教具)を提示するなどの手伝いをしていくという考えです。
参考:日本モンテッソーリ教育綜合研究所「モンテッソーリ教育の基本的な考え方」
3 モンテッソーリ教育における「5分野」とは
モンテッソーリ教育では、子ども達のそれぞれの敏感期を元に、体系化された5つの分野の活動を用意しています。5分野の活動を一つひとつ見ていきましょう。
3.1 日常生活の練習
「日常生活の練習」の目的は、子どもが自分の手や身体を思い通りに使いこなせるようになることです。
着替えや食事の配膳、片付けなど日常のさまざまな活動を通して、子どもたちは運動器官やその機能を発達させ、コントロールされた動きを身につけていきます。
また、自分のことは自分で行えるようになり、「自立心」と「独立心」が育まれます。
3.2 感覚教育
「感覚教育」の目的は、3歳から6歳の間に訪れる「感覚の敏感期」を活用して、匂いや音、触り心地などの感覚器官を発達させていくことです。また、五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚) を磨くことで、ものを感じ取る力を育てます。
感覚器官の発達は知的活動の基礎となるため、モンテッソーリ教育の中でも特に重要視されています。意識してさまざまな感覚に触れることで、物事を観察・考察できる力を習得していくことができるのです。
3.3 言語教育
モンテッソーリの「言語教育」は、系統化された教具や教材を使って行われます。言葉の敏感期にいる子どもたちは、その活動の中で、正しい話し言葉・書き方・読み方・文章の仕組みやきまりを習得していくのです。
また、日常生活の練習と感覚教育を基礎とし、子供の興味や発達段階に適したゲームや言葉遊びなどが用いられます。さらに、「話す」「書く」「読む」だけではなく、「文法」や「文章構成」も早い時期から学んでいきます。
3.4 算数教育
モンテッソーリの「算数教育」は、具体的に感覚で捉えることのできる「数量」から始めてます。
数量(具体的な量)、数詞(数字の読み方)、数字(文字)の3つが結びついてはじめて、「数を理解した」と判断することになるといいます。実体験を通して自分の中に築いた数の概念は、抽象的な考え方や論理的な思考を育みます。
3.5 文化教育
モンテッソーリの「文化教育」は、子どもが、「なぜ?」「どうして?」と疑問に思ったことの答えを見つけ、理解するまでのプロセスを重要視しています。文化教育には、動植物、地理、地学、歴史、道徳(宗教)、音楽、体育、美術などが含まれ、多岐にわたった能力を育みます。
初めは動物や植物などの身近な具体的なものに興味を持ち、だんだんと抽象的なことも理解できるようになります。
こうして子どもたちは、自分を取り巻く世界や宇宙についても興味を広げ、理解していくことができるのです。
4【分野別に解説】モンテッソーリ教育で使われる教具
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モンテッソーリ教育では、子どもの敏感期に応じて、発達を促すために「教具」と呼ばれる道具を使います。
一見ただのおもちゃのように感じられますが、教具とおもちゃは目的が違います。おもちゃは子どもを楽しませるものですが、教具は子どもの内なる力を成長・発達させるものです。
教具は、子どもが自分自身を育てやすいように、サイズや素材、色彩、配置など、工夫されたものになっています。モンテッソーリ教育では、5分野(日常生活の練習、感覚教育、言語教育、算数教育、文化教育)によって、使う教具が異なると言われています。
モンテッソーリ教育で使われる教具を一つひとつ紹介していきましょう。
教具(きょうぐ):モンテッソーリ教育で使用する教材のこと。サイズや素材などさまざまな点で考慮され、状況に応じて手作りされることもあります。
4.1 日常生活の練習で使う教具
◎着衣枠
ファスナーの開け閉め、ボタンを留める、紐を結ぶなどができる教具です。服の着脱練習にもなります。
◎ひも通し
穴の開いたパーツを紐に通し、ビーズのようにつなげていくビーズタイプと、穴の開いた板に、紐を通していくボードタイプがあります。
◎縫いさし
針と糸での縫いもの。年齢が小さい時には、あらかじめ穴を開けた紙を、先の丸い安全な針と毛糸などで縫うところから始めます。
4.2 感覚教育で使う教具
◎雑音筒
6本の円柱の中に、小石やお米など異なった材料が入っている教具です。見た目は同じ筒ですが、振ったときに音の強さがそれぞれ変わります。振って音を確かめ、音の強弱の順に並べるなどして遊びます。
◎ピンクタワー
大きさの異なる10個の立方体です。サイズが異なる立方体を積み上げながら、大きさを見分ける力を育てます。
◎円柱さし
大きさの異なる10個の円柱と穴がセットになっています。1つの穴には決まった円柱しか入らないので、それぞれの形状を見比べ、穴にピッタリはまる円柱を選ぶ力を育てます。
4.3 言語教育で使う教具
◎メタルインセッツ
つまみのついた鉄製の図形(三角や円など)が枠とセットになっている教具です。枠に沿って線を書くなど、運筆練習に役立ちます。
◎砂文字板
つるつるした板にザラザラの砂文字で平仮名やカタカナが一文字ずつ書かれている教具です。砂の部分を指でなぞることで文字の形や書き順が覚えられます。
◎ひらがなスタンプ
ひらがな50音が一文字ずつスタンプになった教具です。ひらがなの理解はできていても自分ではまだ書けない時期におすすめのものです。
4.4 算数教育で使う教具
◎算数棒
1から10までの「量」を表した10本の角棒です。10cmごとに赤と青で交互に色分けされています。数をかたまりとして認識することなどができます。
◎砂数字板
砂文字板の数字バージョンです。砂が吹き付けてある数字を指でなぞって数字の形を触覚と視覚で覚えていきます。
◎十進法の教具セット
1・10・100・1000それぞれのビーズと数字カードを合わせていく教具です。十進法の構成を具体的な物で理解することができます。
4.5 文化教育で使う教具
モンテッソーリ文化教育では、生物や植物、地球や宇宙など、扱う範囲が無限にあるため、身近なさまざまなものが教具になります。
たとえば、「太陽系の惑星模型」や「日本地図パズル」「世界パズル」「動植物の絵カード」などがあります。
各教具は、子どもが活動を選択し、さらに集中して取り組めるよう「環境を作り」、活動に魅力を感じられ、さらに正しい使い方ができるように「やって見せ」、集中して活動を始めたら「見守る」ことを大切にしています。
5 モンテッソーリ教育を受けるメリット
ここからは、モンテッソーリ教育を受けるメリットを3つ紹介します。
5.1 集中力が身につく
モンテッソーリ教育では、子どもたちが行う具体的な活動を「お仕事」と呼びます。
「敏感期」に、このお仕事を「同じことを同じように繰り返す」ことで、子どもは集中力を身に付けていきます。藤井聡太棋士は幼い頃、紙を編んで作る「ハートバッグ」というお仕事に夢中になっていたそうです。毎日大量に作っては持ち帰り、その数は100個にも及んだとか。
その時に、集中してやり遂げる経験を繰り返したことで、今の並外れた集中力を養ったのかもしれませんね。
5.2 自立した子供になる
「敏感期」を大切にされて育った子どもは、心身ともに自立に向かっていきます。
日常の「お仕事」の内容は、年齢や発達段階に合わせて用意されていますが、0歳児にもお仕事があります。お仕事は、大人が決めて与えるのではなく、あくまでも子どもたちの自発的な興味や行動によって決まるのです。
こうした環境で育つことで、自立した子どもへと育って行きます。
5.3 子ども一人ひとりの個性が伸びる
モンテッソーリ教育では、集団で同じことをするのではなく、子どもが自由に取り組むことが尊重されます。
大人から与えられるのではなく、子どもが自発的にしたいことを選び、好きなだけ取り組むことができるので、それぞれの個性が伸びていきます。
6 モンテッソーリ教育を学べる場所
モンテッソーリ教育は、欧米では乳幼児期に限らず、小学校から大学まで取り扱われていることもあります。
しかし、日本では義務教育課程があるため、教育内容が決められているのが現状です。そのため国内でモンテッソーリ教育を受けられるのは、保育園や幼稚園など乳幼児期の教育施設が中心となっています。
ここからは、日本国内でモンテッソーリ教育を受けられる場所を4つ紹介します。
6.1 認可外保育施設
認可外保育施設は、モンテッソーリ教育の資格を持った人が、小規模な幼稚園などを開いている施設です。一軒家などを使用していることが多い傾向です。
認可外保育園のほうが園の特色を出したり、理念を叶えたりしやすいため、あえて認可を受けずに運営している施設もあります。
認可外保育施設は、保育士資格とモンテッソーリ教育の教師資格を持つ人によって運営されています。
6.2 認可保育園
認可保育園でモンテッソーリ教育を導入しているケースもあります。
認可保育園は、国から認可を受けて運営している保育園です。運営のためには、児童福祉法に定められた保育士数や設備などの基準を満たす必要があります。
しかしサービスの多様化により、モンテッソーリ教育を取り入れる保育園も徐々に増えているようです。
6.3 幼稚園
幼稚園は、小学校や中学校と同じく文部科学省が管轄する教育機関です。モンテッソーリ教育を導入している幼稚園は、学校法人や宗教法人などが運営するケースが多いようです。
6.4 専門の教室
専門教室は、未就園児や幼稚園児が降園後に通う、モンテッソーリ教育専門の教室です。
保育園や幼稚園のように日中ずっとではないものの、週に1回~数回、短い時間でもモンテッソーリ教育を受けたい子どもたちのために開かれています。
モンテッソーリ教育を学ばせたい際には、下記3つの団体が運営している施設を選びましょう。
・日本モンテッソーリ協会
・国際モンテッソーリ協会
・日本モンテッソーリ協会綜合研究所
以上3つの団体は、日本で取れるモンテッソーリ教師の資格を発行している機関です。この団体の認定資格を持った教諭や保育士がいるかどうかで判断する、または園の教育方針や理念をチェックすると良いでしょう。
最近では、家庭で実践する「おうちモンテッソーリ 」なども話題になっています。取り入れる際のポイントや手作りの教具などを紹介した書籍もあるので、気になる方はチェックしてみましょう。
7 まとめ
この記事では、モンテッソーリ教育の考え方やモンテッソーリ教育で使われる教具などを詳しく見てきました。
モンテッソーリ教育の一番の目的は、自立した子どもを育てることです。子どもの「敏感期」を利用して、自分自身を伸ばす「自己教育力」を伸ばしていくことで、自立し、その子の個性をますます磨いていくことができます。
子どもの個性を尊重しながら育って欲しいと考えるパパやママは、取り入れてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
hauska編集部
料理、美容、ガジェット好き。最近はインテリアとQOL関連アイテムへの興味関心が爆上がり中。働くパパ・ママに向けて、生活の質の向上、楽しい子育て、仕事もプライベートも充実させるための情報など幅広く発信します。ライフハックに気軽に取り組んでいただければ幸いです。